■金閣寺 /三島由紀夫著
かねてより三島作品を読んだことがないなと思っており、ちょうど
図書館の書架に戻っていた「金閣寺」を手に取りました。
1950年に実際に起きた、金閣寺放火事件を下敷きにした物語です。
京都は成生岬の小さな寺に生まれた溝口少年は、幼少の頃から僧侶で
ある父親に金閣寺(正式名称:鹿苑寺)の美しさを繰り返し聞かされて
成長します。肥大するばかりの、自己の脳内に燦然と輝く比類なき美を
持つ金閣の存在。あまりに想像の金閣が完璧すぎて、初めてその建造物
を直に見た時にはむしろ何の感動も湧かないほどでした。現実の美を
幻想の美が上回っていたのです。
青年時代を迎え、父親の知人が住職をつとめる伝手で金閣へ修行に出、
長く憧憬の対象だった絶対的な美と日々共にある生活を送ることに
なります。
そこから最終的に「金閣を焼かねばならぬ」と天啓を受けるまでの、
様々な人とのかかわりや出来事を通した一人称の彼の心象風景も追う
形で事件まで進みます。
|