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7月16日(木)


甲斐庄楠音(かいのしょうただおと)画集、ロマンチック・エロチスト。

甲斐庄楠音 画集
甲斐庄楠音画集 ロマンチック・エロチスト/監修:島田康寛 発行:株式会社 求龍堂


明治に生まれ、大正に活躍し、昭和に没した画家です。女装もするし男色の噂も漂うしで、実に独特な経歴の持ち主であると言えると思います。昭和時代には、映画制作にもかかわりました。時代劇の風俗・衣装考証などの役割を担ったようです。

本当は、画集の中身を開き、作品をたくさん紹介したくて仕方ありません。表紙で興味を持たれた方は、ぜひ実際に本を手に取ってみていただきたいです。私もいつかは自分の蔵書にできたらと願っているものの、今回は図書館で借りました。数ある横浜市内の図書館でも置いているのは1館1冊だけでしたが、まさか取り扱いがあるとは思っていませんでしたので、嬉しくてすぐに取り寄せました。

絵なので基本的に好みの問題ではありますが、少なくともこの表紙を飾る一枚「島原の女」を見て才気というものを感じない人は少数派ではないでしょうか。
女人を数多く描き残しており、目には見えないはずの内に渦巻く情念やくすぶった妖気、身にまとう怨念さえも匂ってきそうな作品が目立ちます。
中でも裸婦像は、いかにもモデル然とした整った体型の女性ではなく、全体的に豊満でお腹が出ていたり乳房が垂れていたりと、やや崩れた女体が中心的に登場します。しかしその全身からは、生身の人間でしか持ちえない存在感、汗ばみ血の通った女という生き物の色香が確かにほとばしっているのです。女性に対する独自の視点が確立しているように思え、あまり綺麗事ばかりを重視しない人物なのかなという感想も抱きました。

ちなみに、自分のお目当てのひとつであった美しい「春」という作品が、小さめの白黒画像での掲載で、そこだけが個人的にちょっぴり残念でした。欲を言えば、これは見開き1ページのカラーで見たかった・・・!





「横櫛」/甲斐庄楠音画集 ロマンチック・エロチストより

甲斐庄楠音を知ったきっかけは、昔に購入した短編集の文庫本「ぼっけえ、きょうてえ」/岩井志麻子著(角川ホラー文庫)の表紙でした。「横櫛」という作品は、これ以上なくこの本に合っていると感じました。

表題作は、女郎がお客に聞かせる寝物語。暗い室内に渦巻く情念・怨念が、蝋燭の仄かな明かりに照らされてゆっくりと紫煙のごとく立ち上る様が見えるような雰囲気でした。 そしてその念は天井で行き先を失い、いつも当人の元へ戻ってきていそうです。 岡山の方言が効果的で、怪談めいた風情なのに、怖いというより哀しみの感情を刺激します。





「りんご だんだん」/小川忠博著 発行:あすなろ書房

こちらは絵本の紹介です。

一個の赤いつやつやのりんご。このりんごを放置し、約一年に渡り変化を写真に撮り続けるという興味深い試み。りんごはどの時点でどんな変貌を遂げ、最終的にはどうなるのでしょうか。最後までページをめくった小さな子供さんたちがどんな感想を持つのかも気になるところです。

私は、真っ先に仏教画「九相図(くそうず)」を思い出しました。「九相図」は、人間の遺体を屋外で風にさらしたままにし、その朽ち果てる変化を絵にしたもの。最後は骨となり、その骨も土に還ります。まさに諸行無常。描かれた人物は檀林皇后で、死後の移ろいを描き残すのは本人の希望であったと言われます。






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