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6月30日(日)


過日、久方ぶりに図書館で本を借りました。


「夜の谷を行く」 桐野夏生著 /文藝春秋


とても好きな作家ながら、この数年は読書の機会をあまり得られずにいたので、桐野夏生さんの新しい作品の情報にも疎くなっていました。
大抵の場合、少なくともなんとなくの概要は帯によって知ったりするものですが、今回は図書館本でそれが付いておらず、内容に関する予備知識は完全にゼロの状態で手に取り読み始めました。
知らないでいることが難しい今の時代に、知らないことにわくわくしながら。

*下記の感想では物語の詳細に触れていますのでご了承ください



時は2011年。アパートで一人ひそやかな生活を送る、60代の独身女性・西田啓子。
元小学校教諭で以前は個人塾を経営していたが、現在は職には就いておらず、貯金と年金を頼りに細々と暮らしている。

平日の日中には、自転車を漕いで格安のスポーツジムへ行く。まるで中学生でもあるかのように過剰な集団行動を取る老女たちの意地悪さや陰湿さには辟易するばかりだが、面倒に思いつつも事を荒立てないように受け流している。そのために目当てのレッスンを受けそびれる日すらある。他人と深くかかわることを避け、注目される真似を嫌い、ひたすら目立つ言動を封印して生きる道を自ら選択しているのだ。
己の身形にも構わず、ジム近隣の駐輪場管理人である同年代と思しきの男性にも、見下された態度を取られて嫌な思いをしたりする。
食事も、簡素に野菜鍋を作って夜には餅を足してまた食べたりする。
ささやかな楽しみとしての習慣は、図書館で本を借りること。

秀でた容姿も、突出した特技や才能も持ち合わせない啓子は、平凡の中に身を隠すように日々をやり過ごすことができている。
だが実際は、40年前に連合赤軍の女兵士として、あさま山荘事件に繋がる「山岳ベース事件」にて生き残り逮捕され、5年間服役した過去を持つ人物なのだった。
ある晩、長年の沈黙を破りかかってきたかつて同士だった男からの電話が、啓子の内面にさざ波を立てる。


物語は、こうした啓子の暮らしと心が、実妹の娘で自身の姪にあたる佳絵の結婚話を機に少しずつ静かに綻びを見せてゆく様が描かれます。
日本の犯罪史に残る重大な事件により再び大々的に世間から注目されるだとか、社会的に糾弾されるだとかの規模の視点ではなく、あくまで啓子の周辺がざわざわと波立つ感覚です。そのある種の地味さは好ましく心地よく、個人的には桐野夏生さんの物事への着目の仕方の大きな魅力だと思っています。

刑期を終えてからの啓子は、革命左派の兵士として連合赤軍に所属した一連の過去が露見しないよう気を配って生きてきました。両親もとうに亡くなった今では、詳しく事情を知る近しい相手は妹の和子くらい。姪の佳絵は啓子なりに大切にしている数少ない絆で、彼女にも一切を打ち明けずに隠し通してきました。その佳絵が妊娠をきっかけに結婚することとなり、置いてきた過去が猛烈な駆け足で追い付いてきて問題が発生し始めるのです。

連合赤軍については、実名も多く登場し、死刑確定後の最高幹部の一人・永田洋子が2011年2月に東京拘置所で脳腫瘍により死亡した件を筆頭に、事実も重要性をもって挿入されます。
山岳ベースでの永田の真の目的こそ作者独自の迫り方がやや入っているのかも知れませんが、詳細は世に知られている実際の事件から逸脱するわけではなく、自然に啓子も実在の人物なのではないかとの錯覚を得たりします。虚実の融合が始めから終わりまであまりに見事です。

感傷的な女として描かれてはいない啓子ではありますが、兵士だった当時永田にはかわいがられており、飛び込んできた永田死去の報には衝撃を受けます。ひとつの時代が終わったと。翌月起こる東日本大震災も経て、その思いを更に強くします。アパートの部屋に現れた蜘蛛を、永田の魂のように感じたりもします。

そして、永田の死が呼び寄せたかのごとく啓子の日常に足を踏み込んでくる人物たちの人間性も掘り下げられます。癖が強い昔の同士であったり、今はホームレス同然のかつて夫だった男であったり、私的に事件への興味を示すライターの中年男性であったり。
いわゆる健全とは言い難い人間関係にまつわる絶妙な語り口の心象描写や台詞に触れる度に、こういう表現力はこの作者の右に出る者はいないとすらいつも感じます。どう贔屓目に見ても誰一人「他者から好かれる魅力的な人間」は存在しないのに、その心理、思考、心情をじっくり知りたくなり、発する言葉ひとつに意味を見出そうとし、選ぶ言い回しひとつでその人柄を推し量ろうとする意欲が発動してしまうのです。
特に、実妹である和子との「好き・嫌い」「仲が良い・仲が悪い」などのようには簡単に分類できない複雑にもつれた家族関係は、切実な現実感を伴って響きます。単に老人の年齢となった姉妹二人が安普請の部屋などで交わすだけの会話なのに、静かに緊張感を漲らせており、どのやり取りにも大いに引き込まれます。安定しない、接する毎に振れる要素をはらむ間柄であることは間違いありません。

啓子が末端兵士であった昔に永田に気に入られた理由として、米軍基地に侵入してダイナマイトを仕掛け、建物の爆破を実行した点が挙げられました。被害は小火程度で終わったものの、勇気を評価されたのです。
しかし、40年の時を経て、その行為が今度は「大事な姪の結婚式に参加できない理由」に変換されることとなります。
啓子の過去を知らない佳絵は、サイパンでの挙式を楽しみに計画していました。が、啓子がアメリカに入国した場合、「ロス疑惑」の三浦和義氏のように当局に逮捕され、米軍基地襲撃の件でそのまま裁判・投獄となる可能性が高い事実が判明するのです。
渡米できない理由を正直に話せば、最悪の場合結婚自体が破談になるかも知れない。佳絵はすでに身籠っているというのに。けれど、啓子は佳絵にすべて打ち明けることをあっさり決めます。

もはや「革命」などとはかけ離れた山岳ベース事件の現場で、多くの同胞が「総括」の名にすり替えられた私刑による惨たらしい死を遂げてゆく過程に居合わせ、遺体を運び土中に埋める役目をした。簡単に言えば、それが啓子の事実です。
しかし、当人には悪い行いをした自覚は薄く、反省する気持ちも持たず、服役ですべて罪は償ったとの認識でいます。もちろん、それは法的な解釈としては相違ないのですが、あらゆる凶悪犯罪に伴う加害者家族の悲劇が物語るように、ある面では犯罪歴は本人以上に血縁者に重くのしかかるもの。かつて、和子は啓子の事件が原因で激怒した夫と離婚になりました。佳絵は、理由も分からず父親を失った形になります。親戚たちも、皆猛烈な憤りを訴え縁切りし離れてゆきました。
そもそも、佳絵が海外での挙式を考えたのも、新婦側の身内の出席者が母和子と伯母啓子の二人しかいないことを考慮してのことでした。それなのに、サイパンでの結婚式も結局キャンセルせざるを得ず、凄惨な集団リンチ殺人事件に深くかかわった伯母の恐ろしく暗い過去を突然突きつけられることとなったのです。
啓子の告白は、拠り所としている佳絵との関係も蝕み、「身勝手な人間」と烙印を押されると共に彼女からも明確に距離を置かれる結果を招きました。啓子は、身近な人を誰も幸せにはしないのです。
犯罪でも、犯罪には至らない良からぬ行いでも、当事者がもっとも事の重大性を理解できない気がするのは、客観性の不足が原因か、自身への甘さゆえか、もっと根源的に人としてなにか欠落があるからか。そんな風にも考えさせられます。

山岳ベースで啓子の根底を支えたもの、それはおそらく「保身」でした。どんなに小さなあげ足取りの事柄であっても、革命戦士にそぐわない言動をしたと見なされれば、次はたちまち自分が総括の対象となる。対象となれば、生き地獄を味わい死んでゆく結末しか用意されていない。そうはなりたくない。どうか自分以外の奴を選んでくれ。下っ端の自分は、指導部の連中の指示通りに動く。言うままになる。死なないために。生き抜くために。
そして生還し、40年の歳月を経て舞い戻ってきた過去との対峙。そこでも、見え隠れするのはやはり保身ばかりなのでした。責められたくない。面倒から逃げたい。鬱陶しさから解放されたい。
我が身がかわいいのは、誰でも当然のこと。自分を守ろうとするのも同様です。けれど、きっと本人が自覚するより遥かに、保身の周囲には不自由さと息苦しさが充満していると感じさせます。

しかしながら、そんな啓子にもひとつだけ誰にも告げることなく抱えてきた秘密がありました。
その秘め事にだけは、彼女の真の決意と信念が込められており、優しさや思いやりといった善の心もすべて一緒にそこに秘めたのだと思わせられました。
そして、最後の場面では、一点の僅かな希望を灯した光が啓子を照らします。
彼女の救いとなるかは、誰にも分かりません。


読み応えがあり、決して明るいとは言えない様々な人間の機微が息づく素晴らしい小説を読んだとの満足感でいっぱいになる一冊でした。
読後、小さな蜘蛛を室内に見つけ、あっと声が出そうになりました。


※連合赤軍・・・1971-1972年に活動した、「赤軍派」と「革命左派」の二つの組織が互いの利害の一致により共闘するために合体し結成された新左翼集団。


* * *


久しぶりに連絡をくれた中学時代からの友人が、十数年前にまとめて購入してくれた文庫本ブックカバーを少しずつ開封して今も日々愛用してくれているという話を伝えてくれました。本当に驚きましたし、心底感激しました。まさかあの時の紙製ブックカバーが、令和元年に入ったこの現在も大切にされているなんて!

大分前に取り扱い商品からは除いてしまったのですが、今回久方ぶりに友禅和紙のブックカバーを作成することとなりそうです。何年ぶりかなあ。良い意味でちょっと緊張もありつつ、また喜んでもらえる品を張り切って作りたいと思います。

昔懐かしい商品画像も一部引っ張り出してみた。



そして、彼女とブックカバーや本についてのやり取りをしたり、昔作って自分で使っていたブックカバーを物入れから捜索したりするうちに、本来読書好きの自分もついでに手繰り寄せた気がしたのでした。(その後図書館へ行く)





6月14日(金)


カルガモ一家は元気です。

カルガモ親子 画像
カルガモ(軽鴨)のお母さんと子どもたち/カモ目カモ科マガモ属


ひとまずこの撮影日にも子は全員おり、先月とはまた別の若いご婦人たちが「8羽いる!よかった〜」と明るく会話する場に居合わせました。真っ先にその点を心配するのが皆同じで、共感すると共に微笑ましくもなります。

カルガモ親子 画像


カルガモ親子 画像



カルガモ(軽鴨)のお母さんと子どもの肖像/カモ目カモ科マガモ属


カルガモ親子 画像
カルガモ(軽鴨)の子ども/カモ目カモ科マガモ属


* * *


さて、上の画像から梅雨入りも経て2週間ほどが過ぎました。子カルガモたちの目覚ましい成長ぶりと、家族全員無事で
ある事実に乾杯。(※カモ類は、父親は子育て・家族形成に関与しません)

カルガモ一家 画像


どうしても1羽はぐれがちの子がおり、1枚の写真には7羽の姿しか入っていないのですが、8兄弟は健在です。

カルガモ 一家 画像


ぐっと大人びて、お母さんに似てきました。

カルガモ 親子 画像


カルガモ 子ども 画像


それでも、まだまだ愛くるしいあどけなさがちらり。

カルガモ 雛 画像


カルガモ 雛 画像


暗いトンネルを抜ける時も、お母さんを先導してゆきます。

カルガモ 親子 画像


少し前までは越えることが難しかった水辺の岩も、今ではもう大丈夫です。

カルガモ 親子 画像


カルガモ 親子 画像


とにかく皆ものすごい食欲です。田植えと見紛うばかりに泥水の中に体ごと突進してもぐもぐ。カルガモは基本的には植物食で、植物の葉や種子などを食べるとされています。

カルガモ 画像


カルガモ  画像


カルガモ 赤ちゃん 画像


カルガモ 雛 画像


カルガモ 雛 画像


子どもたちの食事の最中、お母さんは静かに佇み全員を見守っていました。
私には、我が子らの成長ぶりを嬉しく誇らしく思うような眼差しに見えました。

カルガモ お母さん 画像


カルガモ 子ども 画像


カルガモ  画像


カルガモ 親子 画像 カルガモ 親子 画像

カルガモ 親子 画像 紫陽花 画像

紫陽花 画像 


そりゃあ、見るよね。

猫画像


カルガモ 家族






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カラスやスズメに匹敵して、人間の日常生活の中において馴染み深いハト。なにやらスタイリッシュに撮れました。

実際は烏骨鶏さんの小屋に彼らの散歩中に入り込み、彼らの餌入れから思う存分ぱくぱく食べたお腹いっぱいの犯行直後である。

カワラバト 画像
カワラバト(河原鳩)/ハト目ハト科カワラバト属


カワラバト 画像


カワラバト 画像


共犯者あり。実に堂々とした手口でありました。

カワラバト 画像


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ごはんを食べられた烏骨鶏さん



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園内の池には、明らかにミシシッピアカミミガメさんの数も増えています。
泳いでいる際、「ぷはぁ〜、もうがまんの限界!」といった面持ちで水上に顔を出すその表情が好きです。


ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)
ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)/カメ目ヌマガメ科アカミミガメ属


ミシシッピアカミミガメ 画像


「超巨大ミシシッピアカミミガメさんご一行、日本列島横断中」の風情。

ミシシッピアカミミガメ 親子


カルガモと同じく、こちらもラブリーな親子です。
手前の子ガメは、おそらく人間の両手の平に収まるくらいの大きさだと思われます。

ミシシッピアカミミガメ 親子 画像


ミシシッピアカミミガメ 画像


あれ・・・?こちらはミシシッピアカミミガメさんじゃない・・・


すみませんが、どちらさまですか・・・


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夫婦で同じ池の中にいながら、ちょくちょく配偶者とはぐれるカイツブリさん。自ら移動しながら一生懸命探したり、声を出して居場所を知らせようと試みたりしているのですが、なかなか巡り合えず。思わず「あなたのご主人(奥さま)※瓜二つ はあちらの池の端にいますよ。ちょっと草が茂って影になっている部分です」と教えたくなる。


カイツブリ 画像
配偶者とはぐれたカイツブリ(鳰)/カイツブリ目カイツブリ科カイツブリ属


カイツブリ 画像
配偶者を探すカイツブリ(鳰)/カイツブリ目カイツブリ科カイツブリ属


カイツブリ 画像
ちょっと諦めムードになるカイツブリ(鳰)/カイツブリ目カイツブリ科カイツブリ属


カイツブリ 画像
一所にとどまり捜索を待つもう一方のはぐれたカイツブリ(鳰)/カイツブリ目カイツブリ科カイツブリ属


カイツブリ つがい
一緒に巣を形成中のカイツブリ夫妻(鳰)/カイツブリ目カイツブリ科カイツブリ属


カイツブリ 画像
おとぼけフェイスがかわいいカイツブリ(鳰)/カイツブリ目カイツブリ科カイツブリ属



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眠たい時に寝る。これぞ魅惑の猫ライフ。おやすみなさい。

野良猫 画像






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