2022年8月1日(月)
久しぶりに製本の仕事をしました。(5年ぶり2回目) ※前回は2017年9月の雑記帳で紹介
120ページの歌集を30冊作りました。製本のページで制作過程の紹介も含め詳細をご案内をいたしておりますので、もしよろしければご覧いただければ嬉しく思います。
機械で行うような完璧な製本とはとても言えないと思いますが、もしこのような手作業の本作りでよろしければご依頼をお待ちいたしております。冊数にも特に制限はございませんので、少数の私家版をご希望の方にもぴったりかと存じます。
製本作業は、大なり小なり「ここでこれをしでかしたら命取り!」といった事柄がいつも以上にそこかしこに散りばめられており、気が抜けません。常に多大な緊張感と集中力をお供に取り組むので、自分にびしっと喝が入りました。わるくない感覚です。
そして、一連の工程を通じて改めて思ったのが、確認作業の重要さです。普段の仕事も、もちろん自分一人の目だけが頼りなので執拗に確認はしますが、今回は少々程度が違いました。異様なほど気をつけていたつもりでも、完成後にこんなことも・・・
26ページの次が29ページに・・・
狐につままれた気分です。工程ごとにあんなに確認したはずなのに。切なきボツ作品となりました。
すかさず頭に浮かんだのは、泡坂妻夫氏の傑作小説「亜愛一郎」シリーズの一編です。
とある編集社で「三易の発祥」との題名の本を出版するべく編集者たちが動いていたのですが、いざ印刷の段に進むまで原稿の記載が「三助の発情」となっていることに誰一人として気づかないというエピソード。
昔初めて読んだ時には大笑いしたものですが、思い込みや先入観がいかにおそろしいか、今は我が目を疑えと自分自身に戒めたくもなります。
どんなに確認しても、しすぎということはありません。これは今後も仕事において肝に銘じます。
【友禅和紙の絵柄について】
お任せでしたので、基調となる色は青にしようとの点は真っ先に決めました。題名の「勿忘草」の花で浮かぶのは、やはり青色の印象が強いと思ったからです。
本当は、ずばり勿忘草柄があればいいなと考え、仕入れ先のお店に連絡して各友禅和紙メーカーに確認をしていただきました。残念ながらそのような絵柄は存在しないと分かり、それなら本物の勿忘草の押し花を用いてしおりを作ってみようとの発想に切り替えました。
結局、厳選した5つの絵柄を実際に取り寄せて、更に迷った挙句カバーの友禅和紙を決定しました。
歌集は、月ごとに「門松」「海」「花」「菊」など様々なお題によって構成されているので、できるだけ題目にある要素が含まれる絵柄がよいと考えました。そして、記憶の波にそういった思い出がいつまでも忘れられることなく漂うイメージに思え、タイトルとも合致すると感じ、決め手としました。
なお、おしくも落選したほかの4種のみなさんには、クリップボード・ノートカバー・ぽち袋・単語帳となってもらい、歌集30冊としおりと共に、ささやかな贈り物として送り出したのでした。
ひと仕事終わって気分爽快。
若冲カレンダー、8月は「隠元豆・玉蜀黍図」。
「いんげんまめ・とうもろこしず」。読み方に一瞬戸惑いあり。
2枚セットになっているうちの右幅、「隠元豆」の方ということのようです。
前月までの鮮やかな色彩から一転、水墨の表現。心地よい静けさを感じる空間に佇む横向きカエルの愛らしいこと。そっとお邪魔したくなる世界観です。
隠元豆・玉蜀黍図/伊藤若冲
*これ以前~2000年は割愛させていただきます
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