■正欲 /朝井リョウ著
はじめての作家さんです。昨年2022年2月に図書館に
申し込み、この3月に順番が回ってきました。
予約待ちに一年以上かかったのもはじめての経験です。
今の時代にふさわしい、「多様性」を主題に据えた物語。
登校拒否児童やその両親、男性に嫌悪感を抱く女子大学生、
更には世でいうマイノリティにすら入れてもらえない特殊
性癖に苦悩する若き男女たち。「普通」とは一体何なのか。
「(変形する)水にしか欲がわかない」とは少々理解が
及ばない範疇ではありましたが、登場人物の「なぜ当たり
前に自分がいつも理解する側・受け入れる側のつもりで
いるのか」という趣旨の叫びは心に響くものがありました。
印象的な表紙は、水鳥であるマガモの雄に見受けられます。
彼らも着水は足からしますから、これは墜落の場面なので
しょうか。それとも覚悟を決めた飛び込みなのでしょうか。
いずれにしても、下が水面だとすれば、まもなく派手な
水しぶきがあがることに間違いありません。
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