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8月21日(土)


しばらくご無沙汰していた二週間に一度の図書館通いが復活し、ちょこちょこと読書を楽しんでいます。
この数か月で読んだ本は以下のような感じです。


『凶悪 -ある死刑囚の告発-』「新潮45」編集部編

・凶悪 -ある死刑囚の告発- /「新潮45」編集部著

・愚行録 /貫井徳郎著

・葉桜の季節に君を想うということ /歌野晶午著

・イニシエーション・ラブ /乾くるみ著

・マボロシの鳥 /太田光著


中でも特に読みごたえがあったのは、犯罪ルポである 「凶悪 -ある死刑囚の告発-」 です。
茨城県で実際に起こった「上申書殺人事件」の発覚から裁判までを追った内容なのですが、あまりにも特殊な点があります。
これは、すでに強盗や殺人の罪状で死刑判決を受けている元暴力団組長の男が、上訴中に獄中から別の殺人への関与を
告白する形で明るみになった事件なのです。2013年に映画化もされています。

表沙汰になっていない、何件にも及ぶ余罪。死刑囚はそれらの事件を公にすることを望み、新潮社のある雑誌記者を指名
して面会や手紙のやり取りを重ねます。時におぼろげな記憶を辿り、少しずつ事件の詳細に迫り、どうにか警察を動かし
立件できるよう証拠を押さえるべく奮闘します。死刑囚には、どうしても法的な制裁を受けさせたい人物がいるのです。
かつては「先生」と呼び慕い、共に蜜月を過ごした不動産ブローカーの男。彼は人の死をお金に変える錬金術師。死刑囚は
「先生」と共謀して幾度も殺人を実行し、不正な不動産の転売や死亡保険金の受取りによって大金を得てきました。彼らが
つかんだすべてのお金は、死臭が漂うものとなっているのです。そして、「先生」は何ら罪に問われることすらなく、愛する
家族と立派な豪邸で暮らし続けています。

その「先生」の凶悪な凶器として多数の人間を殺めてきた死刑囚が全身全霊をかけて「先生」を追い詰める覚悟を示した
のは、自分が死刑判決を受けることになった事件で逮捕されたのち、かわいがっていた舎弟の男が自死した件が決定的な
引き金になりました。舎弟は生活能力に乏しく、死刑囚は自分が消えたあとの彼の行く末を案じて「先生」に重々面倒を見て
くれるように依頼していました。ところが、「先生」は約束を違え見殺しにした挙句、彼の実家の不動産を奪い取りました。
死刑囚にとって、それだけは断じて許すことのできない所業だったのです。

もちろん、新たな犯罪の告発をすることにより、自らの死刑執行を先伸ばしにする意図は、多少なりともありました。実際に
公判の中で本人も認めています。筆者である記者も、その側面が存在するのを端から充分承知でした。それでも、それを
遥かに凌駕する死刑囚の「先生」への憤怒と執念を信じて、葛藤がありながらも確実に取材・調査を進め事件の解明に努める
仕事人の姿勢にはとても引き込まれました。まさに骨太のジャーナリズムを見た気持ちでした。

結局、「先生」が絡む事件で立件できたのは、ひとつの保険金殺人だけでした。「先生」は最後まで罪を認めませんでしたが、
裁判で物を言うのは証拠と証言。地獄へ道連れとまでは叶わなかったものの、最も重い懲役刑が言い渡されました。死刑囚と
雑誌記者という異例の組み合わせが、根気と行動力を要する共同作業の末、闇に葬られていた悪事をたぐりよせ、悪人を
引っ張り出した見事な結末を招いたと思います。
他人の命をお金としか見なさない。けれど妻や娘は大切にしてよき家庭人を演じている。暴力行為や殺人行為は基本的に
人任せ、自分の手は汚さない。役に立たず見限った仲間との約束など平気で反故にする。保身には余念がなく、取材からも
逃げ回る。凶悪にして、どこか薄っぺらいのが、「先生」の実体だったように思えます。告発者の死刑囚が怒り心頭となった
のは、「先生」の不誠実さにほかならなかったと感じました。

反対に、筆者の文章からは、常に誠実さ・真摯さが感じ取れました。改心が見られるとはいえ、極悪人には違いない告発の
主と長い時間をかけてこれ以上なく向き合い、本願であった「先生」の裁判を終えてなお、死刑囚との交流は刑執行のその日
まで続くだろうとも綴っています。個人的に感銘を受けた一文でした。

十代の頃から犯罪ルポものは好んでそれなりに読んできましたが、当たり外れが大きいという印象を持っています。
一度読み始めた本を途中で放棄するというのは、どんなジャンルでもできる限りしたくないと思うたちではあっても、筆者の
独りよがりで偏狭な視点が強く露出しすぎていたり、過剰な誇張や演出表現が目立ち自己顕示欲以外の要素を表して
いないような内容に出くわすと、本当にがっかりしてしまいます。現に、一度だけ序盤で脱落した有名な殺人事件を扱った
本もありました。犯罪のノンフィクションである以上、原則として「中立・公平」な立場はやはり揺るがして欲しくないなと
つくづく考えさせられます。そのうえで取材対象に一個人として抱く感情を効果的に伝えてもらうことで、人の心が説得力を
もって響くような気がします。

ちなみに、「消された一家 -北九州・連続監禁殺人事件-」/豊田正義著 (新潮社) を読んだ時も、同様の信頼を強く感じました。
非常に特異で凄惨なため広く知られており、人間の残酷性をこれでもかと語る救いようのない凶悪事件ですが、生還した
被害者が存在したことは唯一の光です。





 http://www.hitoeusagi.com/

最近知って大ファンになった
「ひとえうさぎ」さん。

とにかくラインスタンプがいちいち
かわいくて、お顔も仕草も
セリフもすべてが最高です。

一体一体のうさちゃん鑑賞に
こんなにじっくり時間をかける人は、
そうはいないと自負しております・・・

-ひとえうさぎさん情報-

・森に棲んでいる

・おにぎりが好物。モグスカ食す

・「きつめきつね」「くまくま」という
 仲のよいお友だちがいる

・ふたえになった経験があるようだ


 http://www.hitoeusagi.com/


 



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